レビュー 


「After The Rainfall」

軽やかで爽やかなアルバムだ。ボブ・シェパードの軽快なソプラノサックス、フルートに関根ヒロエのピアノ、キーボードがからむと、居ながらにしてリゾートで寛ぐ心地よさに浸れる。トラックによって披露されるヒロエのヴォーカルも効果的で、囁くような歌声を聴いていると、どこまでも青く透き通った海辺に遊ぶ気分になる。

一方、シェパードが楽器をテナーサックスに持ち替えると音楽の表情は一変し、まさに21世紀のニューヨーク・ジャズが出現する。ウェザーリポートにも在籍した名ドラマー、ピーター・アースキンの刻み出すタイトなリズムに乗って繰り出されるノリの良い演奏は、実に刺激的。

ところでリーダー、関根ヒロエとの出会いには面白い事情がある。昨年ヒロエさんがご主人と共に私の経営しているジャズ喫茶『いーぐる』に遊びに来てくれた。というのもご主人と私は高校時代からの友人なのだ。

その時、ヒロエさんの前作CDを持参されたのだが、最初私はご主人がプロのジャズピアニストになったのかとカン違いしてしまった。それには理由があって、大昔、ご主人の弾くジャズピアノにえらく驚かされた思い出があるからだ。

どこかのパーティの折、そこにおいてあるグランドピアノにさり気無く近づいた彼は、当時流行りの《テイク・ファイヴ》を巧みに演奏してくれたのである。つまり関根夫妻は共のジャズピアニストなのである。

言うまでも無く、演奏のレベルは圧倒的に奥様の方が上なのだが、それにしても共に同じ音楽をたしなむご夫婦とは、うらやましい限りだ。

後藤雅洋氏(ジャズ喫茶四谷『いーぐる』経営者、ジャズ評論家。ジャズについての著書多数)

 

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